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年代後半から上昇テンポを速め、1987年に五大一次産品(天然ゴム、錫、木材、パーム油、原油)のシェアを抜き、1992年には69%に達した。さらに、製造業部門における就業人口は、1989年から92年の間に年率10%以上の勢いで増加し、92年についに農業就業者数を上回った。マレーシアは、工業国への転換を急速に実現していると言えよう。

 

6 統治機構
(1)国王
元首は、国王である。国王は、半島部の諸州のうちのペナンとマラッカを除いた9つの州の首長であるスルタンの中から5年を任期として選出される。この9つの州のスルタンと、国王によって任命される残りの4つの州の知事が統治者会議を構成し、国王の選任(これについては知事は関与しない)の他に、スルタンの地位と権限、国教としてのイスラム、憲法153条で認められているマレー人の特権等を守るという役割を担っている。連邦の執行権は九首の国王に属するが、内閣の助言に従って行使されなければならない。

 

(2)立法府
連邦の立法権は、上院と下院からなる国会に属している。下院は192の小選挙区から選出された議員から構成され、任期は5年である。上院は国王によって任命される40名の議員と各州議会から2名ずつ計30名選出される議員から構成される。任期は3年で、下院で通過した法案の成立を一定期間遅らせる等、限られた権限のみを有する。予算関連法案は下院に先議権があるが、その他の法案も上院で先議された前例は無い。
法案が法律となるためには国王の同意が必要であるが、1983年の憲法改正により国王の権限が縮小され、国王の同意が与えられない場合、法案が国王に提出されてから15日経過後に自動的に法律となることとされた。

 

(3)司法府
司法府は憲法の規定する最高裁判所及び高等裁判所と連邦法の規定するその他の下級裁判所からなる。最高裁判所は、長官と2名の首席判事、4名の判事から構成される。長官及びその他の最高裁判所の判事は首相の助言に基づいて、国王が任命する。最高裁判所は、民事及び刑事訴訟の高等裁判所に対する上訴裁判所であるほかに、連邦及び州によって制定された法律についての違憲審査権を有し、さらに、連邦と州及び州間の紛争についても管轄権を有する。
また、高等裁判所は、クアラルンプールとサラワク州のクチンに置かれている。高等裁判所の管轄事項のうち死刑判決にかかる刑事訴訟については、陪審員制度が取り入れられている。

 

 

 

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